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<審査員コメント>
・ビジネスの現実は、論理できれいに割り切れるものではなく、予想もつかない出来事の連続だ。ナイキという優れた会社の創業期においても、隠された〝成功の方程式〟なるものではなく、泥くさく、予想もつかない困難な現実に果敢に対処し続けていくことこそが成功の原動力であった――その事実が、勇気と大きな学びを与えてくれる。
・経営者自身が語ることのパワーを感じさせられた1冊。ケーススタディからそのエッセンスを整理して学ぶことも大切だが、それ以上に当事者本人が語る生々しい回想が貴重であることを迫力ある筆致で教えてくれた。
・ナイキは日本企業から多くを学んで創業した――今の若いビジネスパーソンは、この事実を意外と知らない。日本企業が輝いていた時代、こうした事例は珍しくなかった。こうした掘り起こしもビジネス出版社の役割であることを再認識させられる。
・ナイキという突出したブランドの実話であること以上の、物語としての面白さに圧倒される。著者の語り手としての才能も感じさせられた。起業家や経営者が自分の声で事業を語ることは、当時よりもさらに重要になってきている。自らの事業をこれほどドラマチックに語ることができるかどうか、といった視点で読むことからも学びがあるはずだ。
・会社を立ち上げたことで起こる、さまざまな問題、政治的な駆け引きなどが身をもって具体的に書かれている。経営者が直面せざるをえない不安が、見事に描き出されていて、過去の話であっても、現在における優れたスタートアップの教科書にもなり得る。
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<審査員コメント>
・これまで戦略コンサルティングがリードしてきたビジネス手法では、もう差別化できなくなっている今、陳腐化した知識よりも大切なことがあることを思い出させてくれる。「ビジネスパーソンの成長、企業の発展」というビジネス書大賞の理念に照らし合わせても、今、最も高く評価するべき本だと強く感じる。
・日本のビジネスシーンで語られることの少ない“美”という点に着眼した点を大いに評価したい。ビジネス書というと論理や、アカウンタビリティー、サイエンスを重視する傾向にある。ビジネスをする上でこれらはもちろん必要な要素ではあるが、ビジネスパーソンからビジネスエリートにステップアップするために、ぜひ読んでおきたい1冊。
・特に、Googleの理念についての解説は秀逸。今、日本の経営者が本当に読むべき本だ。今後、アート教育にも影響を与えるのではないか。
・経営におけるアートの大切さを訴えたのは、本書が最初ではないが、コンサルタント出身の著者が解説したからこそ、多くのビジネスパーソンに影響を与え、また人によっては議論になるほどの違和感を感じさせているのではないか。ビジネスにおけるアートの大切さを学ぶ上での入り口を作ったこと一つをとっても高い評価に値する。
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<ルトガー・ブレグマン氏よりメッセージ>
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<審査員コメント>
・説得力あるデータに基づいた言説を読み進めるうちに、その概念と政策が当たり前のものとなる世の中を夢想してやまない自分自身がいた。今の世の中に対する閉塞感を一度でも感じた読者にとって未来への羅針盤となりうる1冊だ。
・ベーシックインカムがもたらす未来を説得力を持って見事に描き出している。単に新しい時代の潮流として解説するのではなく、本気で著者が未来にコミットしようとしている迫力があった。
・ベーシックインカムに対する見方が本書で変わった。大きな固定観念を崩しにいこうという意思を持って、幅広いリッチな論拠を展開しているのが魅力だ。多くの人が手軽に読めるといったものではないが、ぜひ政策にかかわる人たちに読んでもらいたい。
・副題に、AI・ベーシックインカムとあるが、それらはテーマの一部分にしか過ぎない。むしろ現代における資本主義社会の重要な事実や経緯についてデータを交えて解説する著者独自の評価や考察が新鮮で興味深い。これからの資本主義や社会の在り方、さらには私たち一般市民の知っておくべき事実を教えてくれる。
・社会の大きな枠組みを考える時に大きなヒントをくれる本。ビジネスパーソンがスキルや生産性を磨くことも大事だが、同時に、大きな視野で社会を見渡して、社会の枠組みそのものに目を向けることも大切だ。この本は、そうした大きな視野を開いてくれるものでもある。
・本書を読むことで、ベーシックインカムに対しての考えが変わってしまう人は多いはずだ。現時点では、大きな部数になっていない注目すべき本に光を当てることも本賞の意義だろう。
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<審査員コメント>
・現在の資本主義のもとでは、結局は、お金に収斂されてしまう価値観、幸福感に対し、新しい動き、静かな革命とも言える変化が起こっていることが、ポジティブな未来として描かれている。内容もさることながら、そこに、著者の人生、ひとりの人間としての思いを感じることができる。
・資本主義への疑問、価値主義の提案自体は目新しいことではないが、お金、金融、経済、資本主義といった基本的な事柄を中心に、その意義や重要性の変遷を解りやすく説明しており、教科書として、極めて優れている。
・2017 年を振り返るにあたり〝仮想通貨〟は欠かせない。時代の象徴的なトピックを扱い、最も注目され、若者に希望を与えた1冊だった。
・いわゆるビジネス書として非常に優れている。時代のパラダイムシフトが簡潔にわかりやすく書かれていて、ビジネスに活かすべきポイントがスッと見つかる。背景には豊富なデータがあるのだろうな……ということを感じながら読めたので、納得感も高かった。せっかくなら、そうした具体例やデータを見せてくれれば、さらに本としての深みが増したのではないか。
・経営者の本というのは、聞き書きでライターがまとめる方法が主流だったが、本書は著者自身が自分で書いているそうだ。社内外で、経営者が自分自身で発信しなければならない場面は増えてきており、経営者にとって、表現し発信するスキルの重要性は高くなっている。書き手としてもすぐれた本書の著者を讃えたい。
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● 総評
・「これからの時代をどう生きるのか?」という大きな課題に目を向けることがビジネス書の大切な役割となっている。ビジネス書の定義の変化を象徴する授賞結果となった。先人の生き方から学ぶことも、大きな枠組みで世の中を捉えるために大切なこと。今回の授賞作はいずれも、その視点の高さが共通点だ。
・ビジネスパーソンが悩んでいる時代だと感じている。企業理念といっても、かつては会社のパンフレットにどう書くかで悩んでいたのが、経営の拠り所として、本気で悩み、大切にする経営者が増えている。そうした時代に、今回のような本が授賞作に選ばれたのは納得感があるし、後から振り返って「こういう年だったのか」と感じさせるものになるはずだ。
・経営者という立場から、読むことを勧める本という観点で選んだ。今回、上位の作品は全て読むことを勧めたい。
・時代性が選考基準に入ってくるのは当然だが、時代性と言いながら、その先に歴史的な背景や普遍的な価値の再発見があることが、今回の授賞作から見えてくる共通点だ。逆に言えば、授賞作には、普遍的な大きな視点があるからこそ、時代の本質を突くものとなったと言える。
・妥当な選考結果だ。私が共通点だと感じたのは、どれもが読者を勇気付けるものであること。知識や経験で勝負する旧世代的な戦い方ではなく、知識も経験も不足していて、未熟で不安かもしれないけれど、心を未来に向ければ勝負できる――そんな勇気を与える本が選ばれた。これこそ今の世の中のトレンドだし、本賞がその流れを加速するものになるといいと思う。
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